100形

ポップな外観に新機軸が輝く、有間電鉄の最新鋭車両。


戸袋部のドット模様は各扉ごとにカラーパターンが異なっており賑やかな印象
戸袋部のドット模様は各扉ごとにカラーパターンが異なっており賑やかな印象

2016年3月から営業運転を開始した、有間電鉄の最新鋭車両です。

2012年発表の次期経営計画に「次世代型車両の開発」が明記されるも具体的なコンセプトについては明らかにされず、月日が経っても製造を匂わせるような動きが無かったことから「新型車両の開発は頓挫したのでは」との悲観的な噂や「他の鉄道会社から中古車両を譲り受ける計画がある」という根拠の無い情報が出回る有様でした。2015年春、地元の新聞に「有間電鉄 新型車両導入へ」と題した記事が掲載され、夏には有間電鉄が「100形電車」の概要を報道発表しました。停滞していた新型車両登場の期待は瞬く間に再燃し、同年11月には日立製作所笠戸事業所(山口県下松市)において第1編成が落成しました。下松駅からJR貨物の機関車に牽引され、山陽本線、東海道本線、宮原操車場で折り返し、福知山線を経由して三田駅に到着。そこからは有電700形のエスコート(在来車両と新型車両の6両編成)により道場検車区へ搬入され、各種走行試験とお披露目・試乗会を経て2016年3月から営業運転に就きました。

 

有電の車両形式にはデ1形に始まり800形までの数字が使用され、車両番号の付番規則では900が事業用車両向けとされているため、一巡りしたことになります。そこで本形式は既に廃形式となったデ100形から形式番号を取って「100形」と命名、有電の創立から100周年の節目(2018年)が近づいていることからも意義のある数字としており、デ100形をリスペクトしたデザインが随所に配置されています。本形式の開発では、有電に求められる通勤・通学・観光の三大輸送需要に対応することは大前提として、顧客満足度(CS)と従業員満足度(ES)のそれぞれを向上させることが重要視されました。

 

構体はアルミニウム合金製ダブルスキン構造(2枚の鉄板をトラス状の補強材でダンボールのように一体化している)で、これは日立製作所の車両製造技術「A-train」を採用したものです。本技術によって従来数万点に及んでいた部品は大幅に削減され、車両のメンテナンスにおいて省力化を実現することができました。塗装においても同様で、クリーム色の単色塗装を施した車体の前頭部と戸袋部にステッカシートを貼り付けることで工程の簡略化を図っています。前頭部は800形よりも傾斜角が緩く、曲面を取り入れながらも正面窓の周りをブラックフェイス処理(これもカラーフィルムによる)とすることで、愛嬌と精悍さを兼ね備える顔立ちに仕上げられました。前照灯は通常用いるものとは別にフォグランプが追加されており、これは濃霧時の走行に対応する装備として運転士から採用の要望が上がっていたものです。尾灯は正面窓より上、フルカラーLEDによる行先表示器の両側へ移され、調色機能により種別灯としても用いることが可能です。前照灯とフォグランプが収まるユニットの形状は先代・デ100形の戸袋窓ガラスに施された「ひょうたん」をリ・デザインしており、乗務員室ドアと客用ドアの間にある車番・社紋の標記にもこれが取り入れられています。客用ドア横にあるドット模様は有電の駅数に因む9つで、サイコロの目の要領で客用ドアの順序や編成番号を表しています。

 

客室内は白を基調とした天井に木目調の化粧壁面材、チャコールグレーの床材を使用。座席のモケットは有間・瑞宝寺公園の紅葉をイメージしたワインレッド色で、混雑時の乗降促進と快適な行楽乗車を両立するため転換クロスシートとロングシートを交互に配置するセミクロスシート方式を採用しました。頭端式ホームの駅(有間温泉駅と三田駅)では列車の最後部に乗客が集中する傾向があるため、先頭車は前寄り(乗務員室側)をロングシート、後ろ寄り(車両間貫通路側)を転換クロスシートとしています。

先頭車は乗務員室と客用ドアの後ろ、中間車は三田寄り車端部に車いす及びベビーカーの乗車スペースとなる「ユニバーサルスペース」を設置。ロングシートの乗降口側には大型の袖仕切りが、シートの中間には定員着席を促進するためスタンションポールと一体化した小型の袖仕切りが設置されました。つり革は様々な体格の人に対応するため高さが3段階に分けられ、握り手も太くして掴みやすい仕様としました。

客用ドアにはドアチャイム、ドア開閉予告灯の他、万が一の挟まれ事故によるダメージを軽減するためにドアを押さえる空気圧を閉扉後数秒間緩める安全装置を搭載しました。ドア上にはフルHD対応ハーフサイズ32インチLCD式車内案内表示装置(阪神5700系・阪急1000系に搭載されているものと同じ)が千鳥状に配置され、近年のインバウンド観光客増加を受けて日・英・中・韓の4ヶ国語による案内表示を実施しています。デジタルサイネージとして沿線の観光案内や企業広告を放映することも可能です。

さらなる顧客満足度の向上を狙い、有電の車両では初となる公衆無線LANサービス(国内主要キャリアのWi-Fiサービスに対応)を実施。車両の屋根上に搭載している無線アンテナのうち、中間に設置された方がWi-Fi専用のアンテナとなっています。有間温泉の観光施策を所管する六甲山有間観光(株)や各電気通信事業者との連携により、列車そのものを走るフリーWi-Fiスポットとする構想も存在しています。

 

制御電動車100形(先頭車)と中間付随車170形(中間車)からなる3両編成は、800形の機器構成を概ねを踏襲しています。日立製のIGBT素子2レベル方式のVVVFインバータ制御装置と全密閉形三相交流かご形誘導電動機を組み合わせ、走行時における車内外の騒音低減を図りました。駆動装置は東洋電機製造製のTD平行カルダン駆動方式を採用し、これは700形と同様となっています。

ブレーキ装置にはナブテスコ製の回生ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキを採用しており、抑速(発電ブレーキ)・非常・保安の各ブレーキを搭載しています。時速70km/h以上で非常ブレーキを作動した際のブレーキ増圧機能、一部ブレーキが使用不能となった場合にも同様にブレーキを増圧するバックアップ機能も備えており、従来車両より格段に保安性を高めたブレーキ装置となりました。

台車は新日鐵住金製のモノリンク軸箱支持装置式軽量ボルスタレス空気ばね台車を採用し、滑走防止装置を備えます。車輪は防音仕様であり、走行時のきしみ音の軽減を図っています。集電装置は有電初となるシングルアーム式パンタグラフを制御電動車の屋根上に搭載しており、新設のパンタグラフ上昇検知装置により運転台のモニタ装置(後述)からパンタグラフの上昇を確認できるようになりました。

運転台は800形から導入したワンハンドルマスコンを引き続き採用しており、日立製の車両情報制御装置「ATI」によって運転計器はモニタ装置に集約(グラスコックピット化)されました。この「ATI」はマスコンを通じた力行・ブレーキなどの運転操作を直列伝送で送信する制御伝送機能、走行装置やドア・空調・案内表示など補助装置の動作状態確認と遠隔操作の機能、さらには検車区での点検・整備時に各種機器の動作履歴を確認する検修機能を有しており、車両の各種機器を制御監視する中核的な存在です。

 

2017年11月には第2編成が営業運転に入る予定で、最古参である600形は完全に置き換えられます。