800形

乗降性を重視した4ドア車両


昇圧工事と700形電車の投入を以て輸送改善計画は一段落したものの、沿線の宅地開発は留まるところを知らず有電の利用者はなおも増加傾向にありました。有電の線路に沿って住宅や学校、商業・公共施設がバランスよく配置された結果、ほぼ全ての駅で乗降が錯綜するようになり、特に2ドア構造のデ500形では乗降時間の遅延によるダイヤ乱れが多発する有様でした。そこで3ドア車両である700形の増備ではなく、新たに4ドア車両を設計してデ500形を置き換えることとなり、1992年11月に800形が落成しました。

 

車体はアルミニウム合金製の大型押出形材を用いて製作され、特に「く」の字形の先頭部は700形よりも丸みを帯びた親しみやすい外観に仕上げられました。700形同様にジャスミンホワイト、オレンジ、プラムの各色を用いた全面塗装が施され、乗務員室扉後ろにある塗り分けは「8」の字がモチーフとなっています。前照灯と尾灯は丸い形状はそのままに700形より大型化され、正面窓の下に配置しています。

ニュータウンからの利用者を主体に設計された車両ですが、客室の内装は名湯・有間温泉にアクセスする有電車両の宿命を継承して温泉旅館をイメージさせる和風のデザインとされています。

・化粧板は「漆喰壁」をモチーフとして砥粉色(ベージュ色系)を基調に扇模様が入ったもの。

・床材は「畳」をモチーフとした黄金色。フットラインも畳縁を思わせる菱柄を採用。

・座席表地は桔梗色(パープル色系)。1人分の着座幅を440ミリに拡大したバケットシート。

・ブラインドカーテン(フリーストップ式)は市松模様。

 

本形式は有電の車両として初めて車椅子スペースを先頭車一番前(乗務員室側)のドア付近に設置し、手すり及び乗務員との通話が可能な非常通報装置を装備しました。案内機器としてはLED式車内案内表示装置(16×176ドットで構成)を各乗降口上部に装備し、次駅及び乗換案内のみならず躯体端部に搭載したスピーカーからドアチャイムを鳴動させることも可能となりました。この他、車内改札や巡回で動き回る車掌の負担を軽減するため自動放送装置、車外スピーカーを搭載しています。

また、始発駅や途中駅での行き違い待ちの際に車内空調効果を維持する目的で「ボタン式半自動機構」が初めて導入されました。これは乗客が自らドア横にあるボタンを操作することで開閉させる仕組みで、当時は主に寒冷地を走る車両で採用されていました。現在では節電の観点からも本機構は注目されており、2016年にデビューした100形には3ドア構造であるにもかかわらず本機構が搭載されています。

 

乗務員室はアイボリー色の壁材にダークグレー色の機器及び計器類(運転台)という配色です。JR線への直通運転を考慮した700形の運転台はツーハンドル式でしたが、本形式ではマスコンとブレーキを一体化したワンハンドル式が初めて採用されました。両手で掴める(利き手にかかわらずスムーズな操作が可能)T字形のハンドルは奥へ押し込むと減速、手前に引くと加速する仕組みであり、他社では阪急電鉄や東急電鉄などの車両に採用されています。計器盤の横にはカラー液晶画面から各種機器の動作状態などをチェックできる車両情報管理装置が設置され、後に700形にも追加搭載工事が施されました。走行機器はおおむね700形を踏襲していますが、心臓部とも言えるVVVFインバータ制御装置はメーカーが三菱電機から日立製作所に変更されています。

 

1993年1月に川崎重工業兵庫工場で落成した第1編成はワンハンドル式運転台の操作方法に運転士を習熟させるため長めの試運転期間が設定され、営業運転開始は1993年8月となりました。続いて9月に第2編成が、11月に第3編成、翌1994年2月に第4編成が落成し、2ドア車両のデ500形を置き換えました。登場後しばらくは投入効果を実証する目的で通勤時間帯を中心に運用されていましたが、現在は600形、700形といった3ドア車両と共通の運用に就いています。